今夜も渚は眠れない夜を過ごしていた。
祐樹から与えられたロフトの部屋でネットの求人サイトを検索している。
「う~ん。今昼夜逆転の生活になってるからやっぱり夜の仕事じゃないと無理だよなあ」
カチカチとマウスで求人サイトを閲覧しながら渚は先ほどの祐樹との会話を回想していた……。
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『お前……今の話、本当なのか?』
祐樹の話は突然すぎて、渚は信じられなかった。
『ああ、本当だ』
『だってお前たち……出会ってまだそんなに経っていないんじゃないか?』
渚の声が何故か上ずる。
『時間か……別にそんなの関係無い。一緒にいるとすごく楽しいし、安心するんだ。だから付き合わないかって告白したわけだし』
『う……。だ、だけど……』
渚が口ごもると祐樹は詰め寄った。
『何でだ? お前もしかして反対してるのか? 別に千尋はお前にとっては興味が無い女だろう? それとも、ひょっとしてお前も彼女のこと好きなのか?』
『ば、馬鹿言うな! いいか、俺の好みは後腐れなさそうな派手なタイプの女なんだ。ああ言う女は面倒臭いに決まってる!』
『随分むきになって反論するな?』
『別にむきになんかねーよ。で、返事貰ったのか?』
わざと何でもないように渚は尋ねる。
『いや、まだだ。いきなり彼氏彼女の関係になってくれって言われても困るだろう? とりあえず、返事はすぐじゃなくていいって伝えてあるよ。でも前向きに検討して欲しいことは言ってあるけどな』
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「はあ~……」
渚は深いため息をついた。
(何故こんなにも千尋のことが気になって仕方が無いのだろう……きっと毎朝夢に出て来るからに決まっている。早く俺の中からアイツが完全に消えてくれない限り、夜に眠ることもできないんじゃないだろうか……?)
不安な考えが頭をよぎるばかりだ。
「くそっ! イライラする!」
渚は下で眠っている祐樹の顔を見下ろした。祐樹は寝息をたてて眠っていた。
「人の気も知らないで気持ちよさそうに寝やがって……」
だけど、仮に祐樹と千尋が付き合うようになったとしたら自分は冷静でいられるのか? それに、ここに住み続けることが出来るのだろうか……?
「多分、無理かも……な」
その時が来る前に、早めに仕事を決めて次の住む場所を決めようと渚は思うのだった――
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時が流れ、桜が散り始める頃――
里中の元に1本の電話が入った。その日、た